2011年8月8日月曜日

折り畳み洋傘Water front®と特許

Water front®という傘をご存知でしょうか?
 その一製品「ポケフラット」を写したのが、以下の写真です。


















 銀色にきらめく背景に筆記体の「Water front®」が目立ちます。
 ちなみに®は、ご存知の方も多いかと思いますが、この「Water front」が登録商標であることを表示するものです。

 駅周辺の雑貨屋などで、このマーク「Water front®」の折り畳み傘をよく見るようになったのは、私自身の記憶では2000年中頃だったように思います。私がこの傘に出会ってからしばらく経ちますが、この傘を作っているところを調べてみたくなり、インターネットで検索をしてみました。

 「Water front®」の製造販売会社は、東京都目黒区に構える「株式会社シューズセレクション」です。

 この「株式会社シューズセレクション」は、日本の洋傘市場が年間1億2000万本といわれるところ、同社は2050万本も販売しており、洋傘市場のシェア17%を実現しています。なるほど、至る所でこの「Water front®」のマークが付いた傘を目にする訳だと思いました。

 年間販売数量は、1994年350万本、1999年450万本、2001年1200万本、2003年1700万本、2006年2000万本と、右肩上がりに増加してきています。
 
 冒頭の写真は、「ポケフラット」と呼ばれる製品です。これは最大厚み2.5mmでスーツの内ポケットにすっぽり入る点を売りにしています。一方、それでありながら、使用時の柄の長さは約50cm、展開時の傘の直径は約80cmというものです。
 また、「ポケフラット」以外にも、同社では、「スーパーポケミニ」、「ペン細」、「ファイブスター」などのシリーズが展開されています(詳細は同社HPを参照)。いずれも、非常にコンパクトで、かつ軽量です。したがって、雨が降っていない日でも常に鞄の中に入れておくことができ、重宝します。私の場合、自宅にあるあらゆる鞄の中に「Water front®」の折り畳み傘を入れっぱなしにしています。

 「株式会社シューズセレクション」のホームページによりますと、同社は、1980年代後半に茨城県古河市に自社工場を建設し一貫加工生産を行っていたということから、いわゆる老舗という訳ではないようです。

 1980年代末には、東京洋傘学院を設立し、洋傘部門の企画開発および洋傘製造職人の育成を行ってきているようです。
 その後、国内生産の維持に努めつつ、国内外数十社の有名ブランド傘のOEM受注生産を行いましたが、バブル崩壊後の「ブランド再構築の流れ」や、職人の高齢化や輸入材料への偏重という国内状況の下、1991年から中国での生産に移行し、現在は中国に加えて、インドネシア、台湾でも生産しています。
 2000年には、「SUPER VLE 500®シリーズ」を展開し、500円という低販売価格で品質やファッション性を維持した折り畳み傘を提供しました。年間販売数量の経緯からもこのあたりが同社のターニングポイントだったのではないでしょうか。
 2004年には「ポケフラット」(極薄型)、「ペン細」(極細型)などの製品を販売し、2007年以降、販売価格1000円の「SUPER VLE 1000®シリーズ」を展開しています。

 「株式会社シューズセレクション」の特許出願(公開中のもの)は全13件で、うち2件が特許権として設定登録されています(2011年8月8日現在)。最初の出願(特開平10-309205)が1997年5月13日で、「SUPER VLE 500®シリーズ」を販売展開するちょっと前であることが分かります。

1.特開平10-309205(1997.05.13出願) 傘
2.特開平11-192114(1998.01.06出願)拡縮式洋傘
3.特開2001-224413(2000.02.15出願)三段式折畳み傘
4.特開2008-142124(2003.12.06出願)折畳式傘⇒特許4594919(2010.09.24登録)
5.特開2008-142125(2006.12.06出願)折畳式傘⇒特許4452709(2010.02.05登録)
6.特開2008-154841(2006.12.25出願)折畳式傘
7.特開2008-264033(2007.04.16出願)傘のロクロ構造
8.特開2009-045359(2007.08.22出願)傘における下ロクロ固定構造
9.特開2009-045360(2007.08.22出願)傘における下ロクロ固定構造
10.特開2009-100815(2007.10.19出願)傘における下ロクロ固定構造
11.特開2009-125278(2007.11.22出願)傘
12.特開2009-165603(2008.01.15出願)扁平折畳式傘
13.特開2009-189641(2008.02.15出願)折畳式傘

 これら特許出願された発明は、ほとんどが折り畳み傘の骨組構造に関係するもので、上ろくろ、下ろくろ、元親骨、受骨など、多くの専門用語で特定された難解な内容でした。例えば、特許4452709の請求項1と関係図を参考までに引用します(特許電子図書館より)。ご興味がある方は、請求項の文言と図面の符号とを照合してみてください。

【請求項1】
多段伸縮式の中棒10の上端部に固定された上ロクロ21と、
該上ロクロ21の下方にて該中棒10に摺動自在に案内される下ロクロ22と、
該上ロクロ22に基端が枢支された元親骨41と、
該下ロクロ22に基端が枢支されるとともに先端が該元親骨41の中央部に枢支された受骨45と、
該元親骨41の先端に一端が枢支された第1ダボ金具61と、
該第1ダボ金具61の他端と該受骨45とに両端が枢支されて架橋配置され、該元親骨41に対する平行リンクとして機能する第1ワイヤー状連杆51と、
該第1ダボ金具61に基端が取り付けられて該第1ダボ金具61の長手方向に沿って延びる中親骨42と、
該中親骨の先端42cに一端が枢支された第2ダボ金具62と、
該第2ダボ金具62の他端と該元親骨とに両端が枢支されて架橋配置され、該中親骨に対する平行リンクとして機能する第2ワイヤー状連杆52と、
該第2ダボ金具62に基端43aが取り付けられて該第2ダボ金具62の長手方向に沿って延びる先親骨43と、
を備え、
該第1ダボ金具61を介して連繋される元親骨41と中親骨42との相互位置、および第2ダボ金具62を介して連繋される中親骨42と先親骨43との相互位置に関し、少なくともそのいずれか一方の相互位置が周方向に相対的にずらされていることを特徴とする折畳傘。

 





































  前記請求項1の各文言と図面とを照合すると、この発明が3段折り畳み式の傘に関係し、どうも第1ダボ金具61、第2ダボ金具62、第1ワイヤー状連杆51および第2ワイヤー状連杆52のあたりを設けて、 元親骨41と中親骨42との相互位置と、中親骨42と先親骨43との相互位置とが所定条件に規定した点を特徴としているようです。そして、この発明によれば、 折畳時の形状を大幅に小径化して携帯の利便性を高めつつも、折畳傘の開閉作動機能を損なわせないという効果を奏するとのことです。

 実際に、私の所持している折り畳み傘を確認すると、以下の写真のように、確かに前図によく似た構成が採用されています。


















 ここで、前述しましたように、注目すべきは、「株式会社シューズセレクション」が特許出願した後に、「SUPER VLE 500®シリーズ」を展開して、その直後に販売数を急速に伸ばした点です。

  このように、 「株式会社シューズセレクション」は、自ら考えた発明を特許出願することにより、自己技術を特許法の下で保護する形で、事業を発展させてきたことが前記経緯からも伺えます。また、特許以外にも意匠登録や、「Water front®」などの商標登録を有しており、同業他者の模倣や追従を許さず、まさに知的財産をうまく活用した成功例ともいえるでしょう。

 私は、折り畳みでない一般の傘を持ち歩くと、よく電車の中などに忘れたりしていました。このため、近年は、もっぱら折り畳み傘を使用しています。特に「Water front®」の折り畳み傘は、非常に低価格でありながら、特許により保護されているように、しっかりとした技術が製品に反映されています。それゆえに、この傘をこれからも長く愛用することになりそうです。

(参照)株式会社シューズセレクションのホームページ⇒http://www.water-front.co.jp/

 「Water front®」の日傘兼用の製品です。

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